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+++++++++++ テーマ/ 恋とか付き合うとか幸せだろうなと思ったけど
ていう男女の話


「あ、あ、すいません刈谷くんちょっと待って。」
そういうと私は二の腕をぱしっと掴み、お菓子の棚を離れようとする彼を引き止めた。
手元のガムやあめの商品をひとつふたつとり、選んでるそぶりをする。
彼もそんな私を見て、近くの商品を眺めるふりをした。
「ごめん行こう。てか、出よう」
1人2人、女子高生が通り過ぎるのを見て私はため息をつき、申し訳なさそうに刈谷くんに言った。
「ん、ああ。」
刈谷くんは適当にそう返事をして、そそくさと歩き出す私につかず離れずついてきた。
『ありがとうございましたー』
スーパーの店員が高らかにあげるその声にすら、私は少しヒヤっとした。
駐車場の向こうの横断歩道までかけよると、私は刈谷くんにもう一度「ごめん」と言った。
「いや、いいよ」と
少し不思議そうに刈谷くんは顔をしかめていった。
「知り合いいたんだよね。あんま好きじゃない・・・ってか、かなり嫌いな人だったからさ」
私はへへ、と卑屈に笑って、意味もなく手をヒラヒラさせて刈谷くんに言った。
「マジか。俺ら危なかったね。」
刈谷くんは黄色になった車の信号をふと見て、さりげなく右側にいた私の左手を握った。
うわあ、と申し訳なく思って、手を引きそうになったが、こらえた。
「この辺、たしかコンビニなかった?そっち行こうよ」
刈谷くんが私を見ていった。
「あ、うん。したら横断歩道、こっちじゃないから・・・・」
大して気にしないように、繋いだままの刈谷くんの手を少し引っ張った。
恥ずかしいというよりも、ここにこうしている自分に違和感があり、気分が悪かった。

高らかな笑い声がかすかに聞こえ、スーパーの方を向くと、女子高生たちが騒ぎながらスーパーを出てくるところだった。
私は来るな来るなと念じながら縮こまって後ろをふりむかないようにした。

「信号ながいな」
刈谷くんが茶化すように言って、私を元気付けようとした。
私は信号が長いことも自分の罪のように思え、(私がスーパーを出てすぐに近くのコンビニのことを思い出していれば今ここで待つ必要もなかったのだ)
「ごめん」と謝り、さっきから謝りすぎている自分に気づいた。
刈谷くんが不機嫌になっていないかと顔を伺ったが、反対側の信号を見てて解らなかった。
女子高生の笑い声は遠くなり、私たちとは反対で、駅のほうに向かっているのだと思った。
私はほっとして刈谷くんに笑いかけたが、刈谷くんはその意図に気づかず、「?」という顔になったのち、苦く笑った。

「あの人たちけっこう、性格キツくてさ。たぶん刈谷くんも、私と一緒にいるからっておかしく言われたと思うよ。
駅のほういってくれて良かった。」
「なんでさ。俺の自慢の彼女なのに。俺たちお似合いのカップルなのに。」
「はは、違うしょ。カッコいいのは、刈谷くんだけだって。」
刈谷くんのくだけた冗談に、上手くこたえられず卑屈になった。
「そんなこと言うなよ」
刈谷くんもやはり、卑屈すぎる私に少し手を焼いてるようだった。今日はもう帰りたいと、ふと思う。

ようやく青になった横断歩道を、無言で渡った。
少し坂道になったところで、沈黙が苦しくなった私は、
「そういえば、この先のコンビニも、けっこう元中の人働いてるんだよね」と言った。
「あ、そうなの?やめようか?」
「いや、あーうん、そっちは大丈夫だと思う。平気平気。」
こちらを気遣う言葉が出るとは思わず、私は少し動揺して、はは、と適当に笑った私の乾いた声がまた響いて、空気はより一層重苦しいものとなった。


コンビニに入り、いくつか2人で食べれる程度のお菓子を買うと、
他にもいくつか商品を選らんでいた彼が、「俺が払うからいいよ」と言った。
私はまた動揺し「えっ、いいよ、自分の分は自分で払うし」と早口でまくしたてかけたが、
刈谷くんが「いいよいいよ」と繰り返し言うので、ためらいながら預けた。
「先に外出てていいよ」
さらにそう言われ、本当に良いのか不安に感じ、刈谷くんのほうを振り向きながら外に出ようとすると、
刈谷くんが持ってきた商品に四角い小さめの箱があり、
あれはコンドームだと私は思った。
とたんに今日遊んでから刈谷くんとそういったことをするまで想像してみたが、
全く思い描けず、途方にくれた。

コンビニを出て、坂を下って、左に曲がってずっといけばそこに私の家がある。
帰りたい。1人で。
刈谷くんと何度か遊ぶようになって、普通の女の子(刈谷くんがきっと私に求めているであろう人物)を
演じるのにも限界がきて、私の緊張は今日でピークに達していた。
しかし刈谷くんがビニール袋をさげて出てきて、「食べる?」と肉まんを私にさしだし、
小腹が空いていた私は素直にありがたく感じた。

「今日、俺んちいく?花ちゃんちいく?」
刈谷くんは何てことのないように私に尋ねたが、それは本当に何てことないと思っているのだろうか、と勘ぐった。
「あー、あの、うちは今日姉ちゃんきてるから・・」
「じゃ俺んちだね」
ガサガサ、とビニール袋を鳴らし、刈谷くんがまた私の手を握った。
好奇心はあったが怖かったし、なによりこの人は本当は信用ならない人間なんじゃないかと考えてしまう。
しかしそんな自分は驕っているようで恥ずかしかったし、
さり気なく刈谷くんを観察しなおして、やっぱりオシャレで、整った顔で、好青年だ。と思い直し、
さらには自分を戒めた。

「じゃー行くか。この長い道のりを」
ゆるい坂道が続く方向をさして、刈谷くんが言ったので、
「がんばろー」と私は声を裏返して、重ねて言った。

大した会話もなく10分ほど歩くと、彼の家についた。
「ごめん今日、掃除してないから汚いわ」
そういって笑った刈谷くんに、私は「いつもでしょ」と、ぐいっと笑顔を作って、冗談を言った。
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